秋分に唸るエレクトリック・マンドリン

エレキだよ、マンドリンだよ



 きっと遥か上エジプトのアブ・シンベル神殿などにおいては、ナイルの彼方より出ずる太陽光が、神殿奥のラムセス二世だか太陽神ラーだか知らんが、その神像をくっきり明るく浮かび上がらせることだろう。秋分春分の日には。そうやって聞いたよ。


 しかし、秋分よ。私はお前の名を語るとき、何か、こう、胸のあたりにもやもやとしたものを感じざるを得ない訳だ。つまり、昼が夜に打ち負かされる日。嗚呼。


 というわけで、楽器を演奏してみる。やはり、季節や人生の変わり目に際しては、音などをぶち鳴らすことが大変に好ましいと考えるのである。


 さて、一年のダークサイド局面入りに際して、私が無意識に手に取った楽器は、エレクトリック・マンドリンである(画像参照)。ホワイ?訳は聞くなよな。


 おお、何と鋭角的な、一見、ギブソンのフライングV、或いはエクスプローラーなどを思わせつつ(思わせないか?)、しかしどっちにしても何か角が足りねーなー、という曖昧なデザインがとっても奇・抜。


 このブツ、流れ流れて私の手元に辿り着いたものであるが、前の持ち主さんによると、更にその前の持ち主さんの手作りだとか何とか。いやあ、そのような結構なものを入手できて幸せ者だよ。が、ノイズが凄いんデス。ジージーと耳鳴りのようにそれは私を苦しめる。


 私は電気に滅法疎い男なのだが、弦などを握りしめてみるとジージーというノイズが止むということは、それは私がアースになっているということだろうか?正解だとしたらクイズ正解者の中から一名になんかくれ。しかし、だからといって、何をどーしたらいーのか、わからんちんなのである。更に謎めいた点は、そのノイズの波が、猛烈に押し寄せてくるビッグウェイヴな時間帯と、割としれっとしているさざ波時間帯があることである。OH!なんと気まぐれな。


 しかし、この暴れ馬の暴れ原理がわかったところで、やれ修理だ、やれ改造だ、などといった行為にどうも乗り出す気がしない。出てくる音に見当がついちゃうのだな。単純に言えば、エレキギターの高いほうの音です。で、マンドリンの音の面白さって、複弦の音の広がりにあると思うのだが、これ単弦。ほんと、エレキギターの高い方をチロチロしてる感じです。


 とはいえ、まぁ、これも何かの縁。弾いて、曲を制作してみています。多分、首尾よく行けば、ラムセスな、ダークサイドの、ジージーと、チロチロした、短〜い曲をお届けしたい。



※参考資料


 昔、エレクトリック・マンドリンなど入手するはるか以前に知ったインドのマジカル・マンドリン弾き。マエストロです。グルです。真似のまの字も出来ません。凄いことが良くわかる技巧ですが、やはり、音的にエレキ・マンドリンの捉えどころのなさも漂っている気がします。


U. Srinivas - Gananayakam

Modern Mandolin Maestro

Modern Mandolin Maestro