リペア週末(2)12弦ギター修理激闘編


 実は12弦ギターを持っている。


 ・・・


 という話は前回した。それがもう非道いズンドコな代物で、超・強力なメンテナンスが必要なわけだ。


 ここでこの件に関する私のメンテンス・ポリシーを確認しておこう。


1.せめて録音に雰囲気ものとして導入できる程度にしよう。
2.あわよくば人前で演奏しても差し支えないレベルのものにしよう。


 控え目な願いといえよう。しかし、このブツをチェックすればする程、それが大それた野望であるという事に気付かされるのである。


 まず基本ポイントから攻めよう。ネックの反りである。美しく順反りカーブを描いている。こんなときにはネックの中に仕込まれたネック反り補正具であるトラスロッドに六角レンチを突っ込んで右に回せば軽く直る。軽く、軽く、回らん。びくともせん。試しに左に回そうとしても、回らん。ピクリともしません。


 こういった時には、クレ550のような潤滑剤をトラスロッドに吹きつけてやろう。シュー。


※貴方の大事なギターに潤滑剤を直にスプレーするような事は決して真似しないようにしよう。


 で、力任せに右へ捻る、捻る、捻る、ベシッ、鈍い音を立ててトラスロッドが回った。古いギターのトラスロッドには潤滑剤が効果的だね。冴えてるね俺の仕事。


 見た感じネックの反りを直して、弦を張りチューニングしてみる。12本もあると本当、大変。とはいえ、ネックの反りも直したし、期待感一杯である。が、しかし、ネックの反りを直したはずなのに、いやに弦高(指板と弦との距離)が高い。高いぞ。眼に見えて不自然だぞ。ものさしを当ててみると12フレットのところできっちり6ミリあった。


 は?


 6ミリ、常識はずれの弦高である。普通2.5ミリくらいなもんだ。猛烈に弾きづらい。大体、6弦開放Eを12フレットで押さえればオクターブ上のEのはずなのに、出ている音はFだ。そんなギターでどう演奏しろというのだ。


 あまりの衝撃にたじろぎ、私は思わず、ネックをボディに固定している4本のねじを抜き取り(フォークギターにしては珍しい構造だ)、ネックとボディをバラバラにしたのであった。


 12弦ギターを破壊する後戻り不能編へと続く。寝ます。