リペア週末(3)12弦ギター、なんとかしてくれ編
要するに週末を利用してひたすらズンドコな12弦ギターを使えるシロモノに修復する企画である。語り出すと止まらない楽器の話。今日はみっちり書きます。書かせて下さい。
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さて、あまりにも異常な弦高を補正すべく、衝動的にネックをボディから分離した俺である。とはいえ考えがあります。ネックとボディの間に薄い板かなんか挟めば良いのだ。そうすれば、ネック自体がボディから高く浮き、ネックの方から弦に近づくはずである。
というわけで、手頃な板を切り、ヤスリで削り細工・加工し、ネックとボディの間にはさみ、ネジでしっかりと留めてみる。
傑作である。ネックとボディの間に板が覗いておる。とってもナチュラルな感じだ。不自然感は微塵もない。ない筈だ。
これにより、12フレット上の弦高は2〜3ミリに収まるはずだ。さっそくチューニングして弾いてみよう。12本も調弦するのはまったく手間がかかる。もどかしい。
キリキリと糸巻きを巻いていてふと気付く。
これって、12弦の強力な張力によって、全体が歪んでね?
確かに、次々と弦をきつく巻いていくと、弦高がどんどん持ち上がっていく。そして、先に巻いた弦のチューニングが下がっていく。つまり、全体の弦の張力が強まって、ギターが歪み、ナット(上駒)とサドル(下駒)間の距離が縮まるのではないだろうか。ゆえに先に張った弦が緩み音が下がっていくのではないか。なーんか、危険だ。
とにかく、張りつめた状態で調弦が完了し、イメージ的にじゃら〜んと奏でてみる。
・・・
じゃら〜んと鳴らない。びりびり鳴っている弦がある。ナットかサドルか、弦の接触が悪いらしい。ナットの溝を削り、サドルの底を削る。うわ、サドルの底を削りすぎた。弦がサドルの上空を浮いている。し、しまったぁあ。
・・・
まぁ、結局、楽器屋でナットとサドルを購入して交換し、なんとか直しましたよ。しかし、今度はフレットの高さがバラバラな事に気付く。フレットの高さがバラバラだと、押さえているフレットより高音側のフレットに弦が接触して、ろくでもない響きになります。
こうなりゃ、一度もやったことがないがフレットの「擦り合わせ」という職人の技に挑むしかあるまい。これは、平面的なヤスリをフレット全体にむらなくかけてフレットの高さを均一に揃えるという技である。
私には手持ちの他のギターでも、弾きすぎて削れてしまったフレットがあるため、擦り合わせ又はフレット交換が必要だなぁ、と悩み続けて20年近く経過しているものがある。この際、この12弦ギターで自分で擦り合わせが出来る事が証明されれば、お悩みギターも自力で補修する道が開かれるというものである。
指板にマスキングテープを貼り、ギシュギシュとフレットを、平板なヤスリで優しく磨いていく。金属粉はフレットが削れている事の証である。さすがに今回は削りすぎというようなたわけた失敗は許されない。慎重に進め、さりとて、パーフェクトの基準がわからないため、ほどほどで完了する。多分、自分でやってもそれなりに出来ますね。
そしてまたしても12弦を調弦するのである。凄まじい張りつめ感がギター全体から放射されているのが伝わってくる。ふと気付く。
ブリッジ全体が弦の激しい張力に引っ張られて、浮き上がってね?
更には、ボディの表板まで変形し、歪み、ブリッジ辺で盛り上がっているようである。人体に例えると、下腹部が盛り上がっている感じ。
・・・
お手上げだぜ。きっといつかこのギターは真っ二つにベシッと折れるか、ブリッジ全体がズボッと抜けるかするのだろう。やってらんねぇ。
とにかく、その、ズンドコギリギリギターを調弦して弾いてみる。
じゃら〜ん
奥行きはまったくないが、雰囲気ものとして近いうちに録音してみよう。音は、やっぱり合わない。人前でなど弾けるわけがない。もしその最中にバキッと真っ二つに折れたなら、まぁ、俺が居合わせた観客なら一生忘れられない光景になるねぇ。他人にも最近起こった滑稽な話題として言いふらします。やってらんねぇ。
保管の際は、弦を緩めておかないと知らぬ間に原形をとどめないものになり果てているかもしれない。ということで、弦を緩めておこう。基本だね。きゅるきゅる(弦を緩める音)。
そして、私は知る。強力な弦の張力のその一端が緩むとき、歪み変形していたボディは元に戻ろうとし、まだ緩めていない残された弦に過大な負荷がかかることを。
ぶちっ
弦を緩める最中にもこのギターの弦は切れるのである。
やってらんねぇ。