sx stompbox


 中学生の時にフォーク・ギターを弾き始めて以来、私のプレイ・スタイルは両手で弦楽器を奏で、口で歌うという、突き詰めてみると人間工学的に極めてシンプルなものである。後頭部で壁を絶え間なく強打しながら横笛を吹くとか、交互に繰り出される飛びひざ蹴りによって太鼓を演奏しながらバイオリンを奏でるとか、そんなスタイルよりも、余程そのプレイ・スタイル人口は多いはずだ。


 しかーし、それではサウンドの幅が固定的であるという事実は否めない。私はギター弾き語り時に、コードを「じゃんじゃかじゃかじゃか」などとストロークしているだけのイントロとか間奏などに、一体何の意味があるのか、昔からさっぱりわからないのだが、一人で演奏している限りそれは宿命である。コードのストロークが背景だとすると前景、つまりメロディが常に欲しいのだ。



解決策1


 曲の構成にイントロも間奏も後奏も導入しない。パっと始まってガーっと歌ってスパっと終わる。潔いね。しかし、歌いっぱなしは疲れるね。そしてイントロや間奏・後奏が、曲を一層盛り上げ、急激な変化をもたらし、滲み出る慕情を醸すものであるということを、やっているうちに懐かしく思い出すだろう。



解決策2


 よかろう。イントロ・間奏・後奏、導入しましょう。しかしコード・ストロークのみは無意味だと断ずる私である。如何に?


 喋れ。


 イントロで喋って、一番を歌って、間奏で喋って、二番を歌って、エンディングで喋る。切れ目なし。昔の武田鉄矢海援隊)みたいだな。しかし、このスタイルを貫くならば、むしろギター漫談のような方向へ歩みを進めた方がいいのではないか。つまり、喋りメインで、間にメロがあるという、堺すすむ師匠のような。



 
解決策3


 よかろう。イントロ・間奏・後奏、導入しましょう。だがそこにどうしてもメロディが欲しい。


 歌え。


 ララーとかナナーとかパパーとかヤンヤーヤとか、あるいはハミングとか、時にはスキャットとか、それは明らかに1・2において提示された解決策とは異なる展開を見せるはずだ。



解決策4


 よかろう。イントロ・間奏・後奏、導入しましょう。しかもそこにメロディ要素を配そう。そこには歌う以外に確立された武器があります。ハーモニカです。ハモニカ・ホルダーを首に装着し、歌っていない、口の空いているときにはハーモニカをぶーかぶーか吹けばよろしい。もっと簡単なのはカズーです。



 よかった、解決して。これでサウンドの幅が若干広がった。イントロ・間奏・後奏をどうするか。そもそもそんなもののない構成にする、喋る、歌う、ハーモニカかカズーを吹く、という4つの解決策を示したわけだが、それを上手いこと組み合せていくと、それなりにバラエティのある表現が出来よう。


 問題は更にその先である。


 手と口はフルに使っている。が、まだ潜在的に演奏に参加できる器官が、人には残されているのである。


 例えば足。


 こんな企みなどを進行させたこともあったが、ちょうどその頃むち打ち症で首が痛くて、やる気が萎えた。そしてドスドスうるせぇので、お部屋で軽く練習する訳にもいかず、この企画は継続して今後の課題となっている。


 しかし、足技能開発ツールとして良いものがあることを知った。



 じゃーん。sx stompbox。


 既に6月の頭頃には購入していたのだが、記すことを忘れていた。木箱の中にピエゾ・ピックアップが内蔵されていて、木箱に衝撃を与えるとその振動を拾って出力するという仕組み。


 店(渋谷のYAMAHA)で試奏した時も薄々気付いていたが、パワーないっスよ。そしてノイズも結構気になる。ライブなどでプレイしたい方はノイズ対策が必須である。一応、シールドのプラグ部分を触っていると人体がアースとなってノイズが軽減するので、アースだけの為に人材を一名確保することを推奨します。


 或いは、他にこのノイズを消し去る方法を御存知の方は、電気に滅法弱いこの私に、どうか解決法を御教示願いたい。ビミョーな一品である。


 しかし、ま、何であれ、全身で表現するって素晴らしいじゃございませんのこと?これでビートが追加されるのである。聴衆の耳目を釘づけにするための道は長く険しいぞ。


参考音源


Download


※結局手で叩いて演奏したものを重ねています。
※※元がしょぼい音なので、ネットオークションで1000円ほどで購入したベース用のエフェクターを通してみました。
※※※私には、足ではこういう風に演奏出来ない気がします。