エーゲ海とバグパイプ 野生水域

野生水域



 9月27日、本家、移動式音楽班のホームページに「野性水域」という曲をアップロードしました。よかったらお聴きください。


移動式音楽班 音の世界「野生水域」


 1992年、夏。その年、トルコに滞在していて、観光旅行者としての滞在期限が切れそうになったので隣国ギリシャに出国することにした。
 トルコを旅しているときから私は、その地方のバグパイプというものを入手しようと企てていた。イスタンブールのほうぼうの楽器屋を当たってみたが手に入らず、ではギリシャでと、そんな企みも抱いてのギリシャ行きだった。


 アテネのプラカ地区というのはパルテノン神殿のお膝元のような地区で、観光の中心地的な場所だが、まず、その辺の楽器屋に入り「バグパイプ(現地名:gaida )欲しいんだけど」と聞いてみた。唐突でしょ。だが、欲しかったのだ。
 何軒か聞いてみたがどの店もないと言う。「ではどこへ行けば手に入る」と聞くと「オモニア広場近辺の楽器屋ならあるだろう」という複数の情報を得た。
 俺は向かった。オモニア広場へ。歩いて30分くらいだったかな。その辺りをぶらぶらしていると瀟洒な楽器屋を発見。俺は迷わず入店し楽器屋の親父に尋ねた(イングリッシュ)。


バグパイプありますか?」
「おー、あるぞ。だが、職人がバカンスに出ているのであと4日待て」


 そういうことなら仕方がない。アテネに用はなかったが4日間だらだら、ぶらぶらする。プラカの通りを何度行ったり来たりしたことだろうか。その間、スーパーで名物タラモ・サラダなどを買って食う。食いきれなかったので次の日食べよう、と取っておいたらかびた。ショックだった。
 そのような日々を送り、4日後、楽器屋へ。


「俺を覚えているか、バグパイプだ」
「おー、職人がまだ戻らない」
「俺も、もうこれ以上待てん」
「んー、ちょっと待っていてくれ」


 親父は倉庫へ向かった。そして、


「在庫があったよ」と悪びれもせずバグパイプを持ってきたのだ。
「どうだ、いいだろう」なんつって。頼む、最初から出してくれ。


 まぁ、そんなことで入手したバグパイプとともに旅を続け、とあるエーゲ海岸の保養地で、泳いだり、定食屋へ行ったりして過ごしつつ、バグパイプを吹いてみたときに思いついた旋律を暖め続けること10年以上、ようやくこうして曲としての体裁が整った次第。


 バグパイプはそのころから、本当にちっとも上達しない。