Värttinä 『 Vihma 』





 ヴァルティナ、最近、再び聞き込んでいる。つまり、かつても聴き込んだことがあり、今また聴き込んでいるという訳。
 1998年リリースということだから、もう8年も前か。まぁ、私にとっては古いとか新しいとか、そんなことどうでもよいことなのだが。


 私はどちらかというと不真面目な音楽リスナーだと思う。Värttinäの音楽を紹介しようとしていながら、Värttinäについてほとんど知らないのだ。ということで聴けばわかるであろうことを綴るほかはない。


 まず、その人たちはフィンランド人である。歌を聴いて「おぉ、これはフィン語だ」と気付いたわけではありません。私にフィン語の語彙はございません。
 最初にこの人たちを知ったのがラジオで、そのときに「フィンランド」という情報を得ていたのだ。ちなみにフィン語には名詞の格変化が14個もあるらしい。ヨーロッパの中ではマジャールハンガリー)と並んでアジア系の言語ということになる。んー、興味あるなぁ。


 次に、それはバンドである。複数の女性ヴォーカルと、ドラムス、ベース、アコーディオンフィドル、笛、ギター(またはブズーキ)などから編成されていると想像できる。


 彼ら・彼女らはトラディショナルな民謡や民俗音楽的な楽曲をロックやポップス的な味付けで演奏する。といっても、あくまでも演奏する道具は民俗楽器を主体としたアンサンブルだ。ワールド・ミュージックというようなありていな言葉で括ることもできるのかもしれないが、彼らがそうしたオルタナティヴな属性を受け入れるかは知らぬ。これがフィンランドのメイン・ストリームよと力強く主張されるかもしれないし。


 やはり最大の聴きどころは複数の女性ヴォーカルの絡み合いである。ブルガリアの女性コーラスなどを想い起こすような地声系の女声の絡みなのだが、もう少しポップ寄りでキュートな感じもする。


 タイトルトラックの「 Vihma 」が凄い。聴いたことのない人のために言葉で表現を試みるなら、これは「早口言葉民謡」とでも表現せねばなるまい。
 冒頭の歌詞はこう。


 lase suojahan väkeni lämpimähän rahvahani X2
 suojahan väkeni ja väkeni joono X2


 で、聞き取った感じをカナにするとこんな感じだ。拍節線には | を入れてみる。4拍子だ。


 ラセスオヤ|ハンヴァケニ|ラムピマハ(ン)|ラ(巻き舌)フヴァハニ|(繰り返し)
 ソヤハンヴァ|ケーニー|ヤヴァケニ|ヨオノオ|(繰り返し)


 こんな感じを何分間か、BPM = 112 くらいで滑舌うるわしくぶっ放す。口回らねッスよ。息継ぎできねッスよ。フィンランドにはこんな伝承音楽があるのか?


 私はフィンランドを知らない。以前、地域の公民館で「世界のお料理教室」みたいなコースが設けられたときに、おばちゃんたちに混ざって私も学んだものだが、そのなかで地元在住のフィンランド人が、かの地の郷土料理を教えてくれる回があり、そのとき初めて曲がりなりにもフィンランド料理というものを食った。


1. パンケーキ(素朴なクレープ)
2. カリフラワー、じゃがいも、人参、豆などの野菜を牛乳で煮込んだシチュー(野菜の味と乳の味で食す素朴料理)
3. ジャガイモ、玉ねぎ、ひき肉、キドニービーンズの炒め煮、コンソメ、トマト&サワークリーム風味(割といける)


 あまりの素朴さに、北の方って冬は長いし、プロテスタント(ルーテル派多数)で、禁欲的なのかしらん、と想像したものだが、Värttinäの音楽を聴く限り、長い冬の、暗く長い夜の間だろうと、消えることのない音楽への情熱というようなものを感じる。今は夏。きっと白夜だ。パンケーキを食い、早口言葉民謡で夏を謳歌する人たちもいるかもしれん。想像するもまた楽し。