ジャケ買いレコード評、韓国編(3)


  


 艶だ。艶が欲しい。今聴きたいのはしっとりとした叙情である。
 ということで愛のデュオ。左の女性は田中真紀子(無所属・現)さんではありません。またしてもハングル文字解読を試みた。


トュエシサラン
ソロサランヘ/ウリウィ サランウル


 と書いてあると思うのだけど意味はわかりません。きっと何やら愛(サラン)を訴えているのだろうが、どれがタイトルでどれがユニットまたは個人名かも不明。あと、ジャケ裏に何者かが鉛筆手書きで「86年」と書いているので、きっとその頃のアルバムなのだろう。


<予想>


 これはもう予想もへったくれもないでしょう。間違いなくムード歌謡です。韓国にそういうジャンルがあるのかはわかりませんが、お隣の国だし同じような感覚はあるでしょう。で、ココ注目。ジャケットが白なんだな。裏も昼間なんだな。つまり、この二人には後ろめたい要素がないわけです。不倫、ホテルで待ってホテルで別れ、未練、ごめんなさいね私見ちゃったの、恨み、奪えるものなら奪いたいあなた、殺意、あなたの肌に爪を立てたい、というような要素(=業)ですね。それがない。ジャケ裏の写真など幸せそうなほどです。新婚?いや、それは違う。なぜならジャケ裏で真紀子(仮名)が着ているグリーンのツーピース。新妻はグリーンのツーピースは着ません。絶対。再会ですね。学生時代に恋心を寄せ合っていた同士が偶然会ってしまった。街角か、空港か、港か、それは知らん。その限られた時間の中で想い出や恋心が湧きあがるのです。そしてそこに歌が生まれる・・・。
 ということから、この二人はムード歌謡界のチェリッシュとでも申しましょうか、さわやか系のムード歌謡なんですね。一体、あの脂と酒(ウイスキーorブランデー)でムンムンしたムード歌謡がどうやったら爽やかになるんだ、という疑問が当然湧いてくるわけですが、一見爽やかな中にも、まぁ、割と何でもやりすぎる情熱的な国柄ですから、真昼のムード歌謡というアクロバット芸を聴かせてくれると思いますよ。サウンド・デザインとしては、ビブラートのかかったサックスは×。やらしーから。エレキにトレモロを軽くかけた感じで、ストリングスも導入したい。フランシス・レイみたいな。


<結果>


 歌詞カードを見ていて凄いこと発見。なんと、ソロサランヘ/ウリウィ サランウルとはそれぞれA面の1曲目と2曲目のタイトルだったのだ!すげーアルバム・タイトル。いいのかそれで、などと思いつつ針をレコードに落とす。すげーくぐもったサウンドの向こうからいやにポルタメントがかかったチープなシンセの音が聴こえてきた。ちーちっち、ちーちっち、3拍子である。真紀子(仮名)の歌唱。


ソーロー、サランヘヨー・・・


 意外と優しい感じの美声である。歌はよい。しかしバックの演奏がなあ、おい、こりゃあ何だ?とにかくシンセの音が妙。あ、男のこと忘れてた、と思ったらひっそりと歌い出した。存在感なし。真紀子(仮名)の添え物ですね。強いて近い雰囲気というとインドの映画音楽かもしれない。真昼のムード歌謡という予想は案外当たっているぞ。まぁ、とにかく奇妙なシンセに耳を塞げば、かなりポップス寄りにも聴こえる。慣れるといいぞ、このアルバム。今までで一番かも。お、A面の5曲目(最後)は1曲目「ソロサランヘ」のカラオケ・ヴァージョンだね。変な作りだが、では歌おうか。と、ここで歌メロを奏でるのは、あの、ビブラートたっぷりのサックスではないか。やるなっつったのに!


 いろんな意味で結構予想的中。真紀子(仮名)、何かいい女に見えてきた。