北国への道

北国への道



 1月21日、移動式音楽班のサイトに歌をアップロードしてみた。よかったらお聴きください。


移動式音楽班おとのせかい 北国への道


 既にGarageBand Users Clubという日頃覗いているサイトにて音源を公開させていただいているが、そちら(参照)とはちょこっとバージョンが違う。一応、主体的にアップしている音源は同一曲でも必ず別バージョンにするというこだわりを持っておりまして。今回は本当にちょこっとだけ違います。


 曲についてのコメントはGarageBand Users Clubや移動式音楽班のサイトにあります。なので、まぁ、少し思い出話でも聞いとくれ。


 高原の町がある。町の外れには大きな、青い湖水の塩湖がある。町はメインストリートの坂道に沿って細長く開けている。その町の東隣には、その町よりは大きく、とはいえその街と同様に、埃っぽく垢抜けない田舎町がある。


 隣町とはいってもその間にはやや険しい山谷があり、隣町へ行くにはこの町から北へ下り、高原の下に広がる盆地のとっつきの、更に北へ向かっていく街道と、そこから南西へ抜ける街道が分岐合流する三叉路で、南西への谷筋を行く街道へと転進し、再び高原へと上って行くのが一般的だ。因みにこの谷筋は薔薇の香油を取るための薔薇栽培が盛んで「薔薇の谷」とも呼ばれていた。


 この街道を行き来するものは、どちら側からどちらの町へ向かうときも、一度、北へ進路を取ることになる。そして眼下に広がる盆地を見ながら高原を下りて行くことになる。


 盆地は、夏には牧草地となり、冬には漠とした曠野となる広々とした大地で、時折、牛や羊が草を食む姿や、それらを統率する牧童の姿を見るほか、生き物の影を感じることはあまりない。


 眼下に盆地を眺めながら行けば、青い空にぽつぽつと雲が浮かび、広い草原には、その雲の影がいくつも見えた。まるで時が止まったような光景だったが、風は流れ、雲は漂っていた。雲はその形と色の表情を様々に変え、空に描かれる模様は地上の風景をも、明るい緑と濃緑のグラデーションに色付けていた。


 「永遠」という言葉を思い出していた。


 ぼんやりと眺めながら、本当に、時が止まってくれたなら、と、その時思った。


 いつか訪れる終末が怖かった。その町を去る日が来る事や、どこかに根を生やして生きなければならない日が、いずれ訪れることが。


 高原を下り、盆地へ連なる街道をどこまでも北へ行けばその国で最大の町がある。そこは空をぼさっと眺めていられるお気楽な日々の始発であり終着であった。