アントニー


 凄い声の持ち主に出会った。いや、以前から知っているのだが改めて再確認した。


 ビョークの最新アルバム『Volta』をこのところ聴いているのだが(やっと購入したのだ)、その中の「The Dull Flame Of Desire」と「My Juvenile」に参加している男性ボーカルの声を聴いて、おお、この声は、紛れもなく、と思い出したのだ。


 ルー・リードは2003年に『The Raven』というアルバムを発表している(私はなぜかそのアルバムを香港で入手している )のだが、その中でルーの往年の名曲、名曲中の名曲、傑作中の傑作、「Perfect Day」を歌う男性の声に私は熱狂した。


 独特の、深いファルセット、時に鋼のように強靭で、時に震えるように柔らかく、シックで豊穣、感情を抑え、シュールさと退廃感をも漂わす、部屋の空気の色を変えるような、黒人だろうか、この歌い方と、この深い声は。


 とにかく強烈な印象が残った。名前だけは覚えていたのだが、彼がどんなミュージシャンで、どんな活動をしているかなどまで、そのときは調べなかった。音楽雑誌のようなものも定期的に読んだりしないので、それっきりになってしまっていた。


 しかし、再び、邂逅する。凄いよ、凄いんだよ、声が。ビョークとのデュエットを聴いていると、二人の声の素晴らしさに、胸に込み上げる説明しがたい感動を抑えることが出来ない。「The Dull Flame Of Desire」はビョークのキャリアの中で最も愛する曲の一つになるだろう。


 Antony Hegaty


イギリス生まれ、白人、アンドロギュヌス


 私は彼が率いるグループのアルバムを入手することになるだろう。この声が歌う曲を、もっと聴きたくなった。


Volta

Volta