Antony and the Johnsons / I Am a Bird Now


 最近、ずっぽしはまりこんでいる音楽がある。


 以前にも触れたが、ビョークの新しいアルバムの中で、ビョークと共に2曲歌っているAntony Hegatyが率いるバンドAntony and the Johnsonsのアルバムである。


 2005年発表なので、既に2年以上経過しているが、最近になって入手し、以来、狂ったように聴いている。


 とにかく、その比類なき歌唱に耳を奪われる。一瞬にして彼らの世界に引き込まれるようだ。なんという声なのだろう。独特のファルセット。軽く、深く、明るく、暗く、多彩な表情を見せるが、その芯には深い孤独、哀しみが感じられるような声。


 サウンドはピアノを主体に、ストリングスやブラスなどが加わり、ソウル的なポピュラー音楽、時には教会における宗教音楽、さらには繊細な室内楽をも思わせるものである。ギラギラとしてはいないが、真っ暗闇の闇夜を流れる河が、ときどき月光に鈍くギラッと光るように、それはその人の内部を放射しているのか、反射しているのか、歌唱と合わせ、凄みを感じさせる。


Antony And The Johnsons - Hope There's Someone




 アントニーは男と女の境界の人らしい。敢えて言うなら、異能のシンガーが描く世界と言えるだろう。そういった人生が音楽に影響を与えていることは紛れもないことだろうと想像する。音楽というものを、それ抜きに語るべきなのか、それゆえに語られるべきなのか、私にはわからない。そしてそれが、どちら側から見ても光を感じられるものなのか、ある一方の側から見ているものにしか光を感じられないのか、それも私にはわからない。私は、目も眩むような、静謐な熱情の塊を受信した思いで聴いている。


 裏声で、一緒に歌ってみた。もちろん、こんな声、出ぬ。



I'm a Bird Now

I'm a Bird Now