夏は私に愛を歌わせ、冬は私に死を歌わせる


 冬が近づいている。まだ、ぶるぶる震えるような北風が吹く季節ではないけれど、確実にそれが迫ってきていることを感じている。


 今住んでいる家には小さな庭がある。別に園芸を趣味としてたしなんでいる訳ではないが、庭には草を植えてある。

スカボローの市へ行くの?
パセリ、セージ、ローズマリー、タイム
そこに住むあの人によろしく伝えてください
彼女はわたしが本当に愛した人なのです


サイモンとガーファンクル スカボロー・フェアより


 お馴染みのパセリ、セージ、ローズマリー、タイム、いわゆるハーブである。青々とぼうぼうと、手をかけなくとも雑草のように繁茂していく植物である。食ったり、料理の香り付けにしたり、茶にしたりと利用する。以前はスーパーなどで入手し辛かったり、ぼうぼう繁殖する割には高価だったりしたため、10年程前から自分で栽培している。


 パセリは、そのまま冬を越す。雪の下でも、乾ききった寒風の下でも枯れない。翌年、花が咲き、種をつけ、それから枯れる。なので放っておく。気が向くと乾燥葉を作る。


 セージとタイムは冬期、一見、枯草のようになるが、春になると芽が出てきて、再びぼうぼう葉をつける。連中は放っておくと幹が木のようになっていき、葉ぶりが極度に悪くなるので、冬の前には、迷わず半分以下の大きさになるまで剪定する。


 ローズマリーは、私の棲家の環境では野外で越冬しない。枯れる。セージやタイムより寒さに弱い。植え替えを嫌うそうなのでこれは鉢に植えてある。厳冬期には室内へ取り込む。放っておくと木になって葉ぶりが悪くなる点はセージやタイムと似ている。ゆえに、これも剪定する。セージやタイムよりは丁寧に。


 こうして剪定した葉を束ねたり、新聞紙の上に広げたりして乾燥させ、冬の間、気が向くとハーブ・ティーを容れたり、料理に使う。


 私は冬が怖い。その怖れは肉体の死に直結している。


 まぁ、まだ死んだりはしないだろう。だが、身体の器官が少しずつ、少しずつ死んでいく恐怖を冬は私に味わわせる。


 「スカボロー・フェア」のまじないの言葉「パセリ、セージ・・・」というわけではないが、私は、魔法の薬草のような効能を心のどこかで期待しながら、草を育て(別に手をかけてるわけじゃないけど)、収穫し、服用するのかもしれない。