ある思いつき モザイク的手法 一


 音楽制作のアイディアなど書き留めておく。珍しい。夢のあることを書こうじゃないか(私にとってね)。


 私は道楽で楽団(一人だけどさ)などに血道を上げておるもので、活動は主にフォークっぽい録音作品を制作することであるが、その際、意識している手法というか概念として「モザイク」「パッチワーク」「コラージュ」というものがある。音楽制作の用語として広く使用されるものであるのかどうか、私のような素人の知るところではない。


 モザイクは、小さなタイルやガラス片などを埋め込んだり嵌め込んだりして模様を描くことである。


 パッチワークは、布片を縫い合わせて模様を描くものである。つぎはぎである。


 コラージュは、絵画や写真で、脈絡のない素材の断片を貼り付けたり重ね合わせたりすることである。


 まぁ、そんなことを音楽制作に置き換えて意識しているというのは、パソコンで音楽作品を制作している環境にもよるし、制作者(=俺)の移り気で軽薄な心性によるものだとも思う。


 さて、そうした手法をより派手に追究していきたいぜと、木の葉の舞い落ちる秋、なぜか感じているのでありますが、今日は一つ、モザイク的な作品のアイディアを思いついた。


 モザイク全体を構成する一つ一つの欠片は完璧な造形をしている必要は必ずしもない。それら欠片の集合全体が印象を与える。例えば、言語というものもモザイクのようなものとして捉えることが出来るかもしれない。


 日本語のネイティヴ話者は、概ね「音節」を言葉を構成する最小単位と考えている。「木の葉」といえば「こ+の+は」の三音節の一音一音を最少の単位と考えるはずだ。しかし、音節は更に「音素」という、より小さな単位から成り立っている。アカデミックなことを言い出せばきりがないが、平たく言えば子音母音である。


 いろいろな考え方があるようなのでこれがスタンダードとは言えないが、標準的な日本語には下記の音素がある。

  • 母音 a i u e o
  • 半母音 j(ヤ行の母音の前に立つ音) w(ワ行の母音の前に立つ音)
  • 子音 k g s z t d n h b p m r
  • 特殊音 N(撥音:「ん」) Q(促音:「っ」) R(長音:「ー」)


 これらの音素をそれぞれ録音して、モザイクの欠片のように組み合わせるのだ。促音、長音は単独では発音できないが、まぁ、母音、半母音、子音、撥音あわせて、たかだか20個の音声サンプルがあれば、非常に大雑把な日本語の音節を形成することが出来よう。音素モザイクから音節、さらに言語という幾何学模様が生まれるという訳。


 これを作品にするには、音素をどういった配列で並べるか、例えばプログラムに拠るとか、サイコロやカードのような偶然性に委ねるとか、勿論テクストに沿ってとか、どの道を選択するかによって制作者の個性が現れるだろう。日本語の音節は特殊音が絡まなければ「母音のみ」「子音(または半母音)+母音」「子音+半母音+母音」の3パターンの構造しかないので、その規則を踏めば意味のあるものであれ、謎なものであれ、日本語ちっくな音声を比較的たやすく造作できるだろう。どうだろう。


 歌わせるなら音階毎の母音及び撥音の音声サンプルが必要になる。オクターブ12音階全部必要なら12*6=72のサンプルが必要だ(ソフトウェアによっては音声サンプルの音程を変えられるので必要ない)。


 ボクの子音とカノジョの母音が一つの音節になったりすれば、妙な、生々しくやーらしい感じの高揚感を得られるかもしれない。変態だね。歴史的な偉人・超人・有名人などとの音素結合も可能かもしれない。人力ヴォーカロイドのような真似も出来るかもしれない。かもしれない。変態だね。


 そしてそれはモザイクが生み出す幾何学模様なのです。うわ、変態だねプラン、やってみよう。