変態フェス2
ステージ上に二人の男。エレキ・ギターと、エレクトリックのこぎりが、互いに呼応するようにミョーンミョーンと奏でられる呪術的な演奏が行なわれる。ステージ中央後方にはなぜか臼がセットされている。
ほう。臼、ですか。
呪術的な演奏が続く中、客席後方から「おおー」などという嬌声が聴こえてきて、もう一人の男がステージによろよろと現れる。手には杵。
そして、杵で臼を、打つ・打つ・打つ。
よろよろしながら打撃しているので臼の底になかなかジャストミートせず、ほとんど縁に、リムショット気味にかすっているところが、深い楽想を提起しているかのようだ。観客げらげら笑う。
臼プレイヤーは、続いて靴を脱ぎ捨てると、やおら靴下まで脱ぎ捨て上空に放り投げた。そしてステージ中央前面に寝かされていたベースを手に取って構えた。ベース&ヴォーカルなのだな。ん、更に背面にも一台背負った。更に、自分の足もとに寝かされたもう一台のベースに向かい、素足で身構えた。そして、3台のベースを両手と足で同時に演奏しだした。足指はアクセントの位置で器用にもベース弦をまとめてダウンストロークしていたりする。そして歌っている。何を言っているのかは全く分からない。叫びである。
続いてスタッフによって椅子が3台運び込まれ、横一列に並べられた。左の椅子にベースが置かれ、中央にベーシストが座り、右の椅子にもベースが置かれた。そして足もとにもベース。おおっ、3台のベースのフォーメーション変更である。やはり両手と足により、新たな体勢で3台まとめて演奏される。すげえな。
やがて臼と杵、椅子は撤去され、今度は丸テーブルが運ばれる。その上には魔法瓶とやかんが置かれた。
なるほど、お茶の時間、ですか。
いや、魔法瓶には無骨にピックアップが取り付けられ、コードが出ている。ベーシストは、ベースを脱ぎ捨て、ヤカンの水で手を濡らす。
そして魔法瓶を猛烈に、擦る(きゅっ)擦る(きゅっ)擦る(きゅ)。
スピーカーからラウドなきゅっきゅっきゅ音が轟く。観客げらげら笑う。
2007年8月12日、第一回変態フェスティバルのハイライト、負塊(ふかい)の演奏の模様の、ほんの一部を描写してみました。移動式音楽班も参加した変態フェスでしたが、その第二回が開催されるそうです。で、再び演奏させていただきます。負塊の演奏も楽しみです。