生姜入りのミルクティ
そのまんまである。いつぞやどこぞのメディアで取り上げられたものか、結構、愛飲している人も多いらしい。最も簡易と思われる作り方は、ミルクティを作って、ハウスとかS&Bなどのチューブ入りのすりおろし生生姜をにゅううっとカップに投下し掻き混ぜることだろう。私はそこにチャイ・マサラ(カルダモンとかシナモンなどのミックススパイス)をしゅぱしゅぱと振りかけ、更に掻き混ぜていただく。甘くするかしないかは気分次第だ。
以前、シンガポールを訪れたことがあった。街をぶらぶらし、インド人街かアラブ・ストリートか、あぁ、暑い、最早、自分でも、もう、訳わからぬ、という気分で、どこかその辺りのコーヒースタンドのようなところに漂着する。
一丁ビールでも飲んでやるか、真っ昼間っから、と息巻いていたのだが、そのスタンドのおしながきに"Ginger Tea"なる一行を発見した。生姜茶。どんなものだろう。印度系と思しき優しそうな細面の店員青年に尋ねてみる。
「あの、ジンジャー・ティって何ですか」
青年、我が意を得たりと言う表情で解説する。
「ティーにジンジャーを入れたものさ。美味しいよ。試してみるか」
実にそのまんまな解説であるが、ふうん、じゃあやっぱりビールね、などと言ったなら何となくジンジャーティーを完全否定するような成り行きになってしまった。青年の口調は押し付けがましくはなく、私自身押しに屈したわけでもないが、好奇心を覚えた。それではそのジンジャー・ティーを試してみるよ、とオーダーする。
青年はカウンターの中で茶を製作する。生姜を布巾のようなもので包み、ぎゅううっと絞り汁を濾して入れる。
青年の解説通りのドリンクだった。一体、もう訳わからぬくらい暑さに打ちのめされているというのに、しかもホットドリンクだぜ。湯気立ってるし。しかし、暑いときには熱い飲物、という東洋的な教えくらい存じておる。
その熱々の一杯を口に含んでみる。とろっとしたミルクティ、濃い甘口の中に、シャープな生姜の風味。おお、これは、イッツ・ア・スーパー・ドライ。コクがあるのにキレがあるぜ。つまり生姜たっぷり入りのチャイか。
青年に、うまいな、と親指を立てると、嬉しそうな顔をした。
そんな風に熱帯環境下で知ったものであるが、今日、私はこのドリンクを真冬に愛飲する。飲むと温まった身体に体液が循環する気がする。