ウラジーミル・ヴィソーツキイ/オオカミ狩り


 このところ冷え込み厳しく、昨日の朝は車のバッテリーがかからなかった。私にはこのように、寒さによって実に不快な気分を味わわされたときに口をつく悪態がある。


 「ロシアか、ここは」


 別にロシアそのものに悪態をついている訳ではないしロシアを嫌っているわけでもない。極度に寒い風土の例えです。


 というわけで、ブースター・ケーブルを借りてきてもう一台の車のバッテリーと接続し始動を試みることにする。そもそも私は車のボンネットなど滅多に開けたことがない。多分、この10年一度も。どこかのレバーを引くか押すかすれば開くのだろうが、どこにそんなレバーがあるのか知らん。あぁ、寒い。ヴラジヴォストク(始発駅)。


 車の取り扱い説明書「各部の名称」やら「緊急の場合」やらひっくり返し、ようやく該当項目発見(二台分)。ボンネットを開け(二台分)ケーブルを接続する。厳寒。イルクーツク


※生活お役立ち情報:バッテリー上がり、ケーブルの繋ぎ方(初心者編)

  1. 故障車のバッテリーのプラスにケーブル(赤)のクリップ接続
  2. 救援車のバッテリーのプラスにケーブル(赤)のクリップ接続
  3. 救援車のバッテリーのマイナスにケーブル(黒)のクリップ接続
  4. 故障車のバッテリーのエンジンブロックにケーブル(黒)のクリップ接続


 エンジンブロックとはなんぞや。意味不明な専門用語である。エンジンルーム内の金属ボルトなどでもよいと書いてあるのでその辺のボルトの頭に接続。私は昔、結線の順を間違えてヒューズを飛ばしたことがある。酷寒。ノヴォシビルスク


 救援車のエンジン始動。
 故障車のエンジン始動。


 カシュ、カシュ、カシュ、かからん、モスクヴァ。ギ、ギ、ジ、ブーーーン。ようやくかかった。サンクト・ペテルブルク(終着駅)。始発駅から終着駅まで30分もかかってしまった。も、死ぬ。


 暖かい室内で、音楽を聴く。ウラジーミル・ヴィソーツキイ。1980年に没したソヴィエト時代の役者、歌手。


 ウラジーミル・ヴィソーツキイ/オオカミ狩り



 オオカミ狩りは不公平だ
 オオカミは伝統に忠実で旗を越えてはならんと植え付けられたのだ
 猟師どもは赤い旗のところで俺達オオカミを待ち構える
 俺は従順さを棄て旗を越えた...


 偉大な魂。寒サニマケズ、俺もエンジンかけて行こうゴーゴー。