班活動の季節


 私は楽団の班長なのである。団員は、そうさ、俺一人さ。


 お正月、あるイメージを思いつきで、チロチロと楽器で奏で、フレーズを忘れないように録音のできるウォークマン(カセットだ)へ吹き込む。同時に簡単な譜も書く。忘れないためである。私はしばしば鼻歌でとてつもない大傑作をものしているのだが、気がつくと「あれ〜?」っと忘れてしまっているがために、未だとてつもない大傑作を書けずにいる。潜在的には大傑作を連発しているはずだ(吹かし)。


 曲により、また、使う楽器にもよるのだが、コード(和音)というもののことを全く考えていない。三弦(正確には三コース複弦)の楽器を使っているのだが、当然、物理的に三和音以上出せんし、西洋的なコードを伴奏することを三弦の楽器というものは戦略として追究していないだろうと考える。奏でる旋律がそのままユニゾンで歌メロになる。で、弾き語りスタイルとする。始終持続する通奏低音(ドローン)は意識される。


 10日ほど練習する。私のあらん限りの全テクニックを投入する。え、こ・これが全テクですかぁ、という程度のものしかないことに軽く愕然とする。まぁ、仕方ないわな。そして10日ほど経過してもなお、一曲通して間違えずに弾けることは稀である。


 さて、ではそれでもハードディスクに録音してみよう。集中を高める。おぉ、指が滑るように動き、一曲弾き切る。今日の俺、絶好調?
 しかし、モニターすると何ヶ所か荒いところ、迷って弾いていることがわかるところがあり、再度録音する。調子は良い。しかし二・三度、途中でつっかえ録音しなおす。
 かれこれ四度目か五度目か、私は一曲通して弾き切る。オーケーである。私にとってはベストである。繊細な響きを意識しながら出来た。こんなにつるりと録音終了などということがあるだろうか。今年は、いいぞ。俺。


 10日ほど編集する。シンセサイザー、効果音、ノイズなど付加する。この作業は、録音物を制作していてイマジネーションを存分に発揮できる楽しい行程である。


 一連の作業の間、歌の言葉を考えていたが、ぜ〜んぜん書けずにいた。が、まぁ、こういうことは焦ってはいけない。じっと待つのだよ。待ってりゃある日、ポンと書けるのだよ。そしてそのある日がやってきた。


 ポン。書けた(軽く書いているようだよな)。


 が、ここでまた焦ってはいけないのだよ。私はおっちょこちょいでね。何日か吟味し添削する。


 出来た。週末、歌おう。


 基本的に私はこのようにして楽曲を制作するようだ。あとは編成の入り組み加減の問題である。まったくもってありきたりな行程である。オチのない文だが、それは制作物で。