酒の話である


 とっても夢のあることを。


 私はたしなむ程度に酒を飲む、いたって凡庸な市民である。決して毎夜飲んだりはしない。しかし、例えば呑み助で知られた地域住民などと、止むを得ず一献交えるような席に追い込まれた場合には、キリっとした「絶対、負けねー」という決意の元、飲み比べのような状態へと堕していくことも稀にある。


 最も好きな酒はシャンパンである。これは動かし難い。もしも許されるのなら一生食事の供にシャンパンを飲みつづけ、黄金の泡の夢の中、貴方とロンドを踊りつづけたい。銘柄は何でもよろしい。


 しかし、そうはいかないのである。全く。


 続いて私が好む酒はワインであろう。紅白どちらも好む。ちょっとした料理を食うときなど、ワインを飲まねばなんとなく収まりが悪い。もしも許されるのなら一生食事の供にワインを飲みつづけ、酒で灼けたてらてらの額を輝かせ、貴方とタンゴを踊りたい。産地銘柄は何でもよろしい。


 しかし、そうもいかないのである。全く。


 更に私はラム、ウォトカ、テキーラ、ジンといったスピリッツの類も、別に何で薄めるでもなくやる。家ではラムを在庫していることが多い。時々、夜、小さなグラスで何杯かちびちび飲む。もしも許されるのなら、一生、これは食後がよいな、ラム酒を飲みつづけ、常に酔いが覚めることのない、二日酔いなのか三日酔いなのか不明な酩酊状態の中、貴方とマンボを踊りたい。そんな状態で銘柄など気にしないだろうな。


 ところで私は、自称ビーラーである。つまりビール人である。ビール、アイ・ラヴ・ユー。
 ここまで何ゆえ、もしも許されるなら一生食事の供にビールをチョイスしてこなかったかといえば、ふっ、俺はビーラーだぜ、もしも許されるなら、一生一日中、朝、ビールいただきまーす。昼、ビールいっただっきまーす。夜、ビールいただくっす、それ自体食事代わりでも構わないぜ、絶え間なくビールの海で泳いでいたいぜ、という基本姿勢だからである。もう好きとか嫌いの問題ではないのである。イッツ・マイ・ライフ。この件では銘柄にこだわります。踊りは、腹が苦しくなるので厳しいぜ。


 しかし、決してそんな風にはいかないのであーる。


※明日から数日飲む予定。たしなむ程度に。