マジック


magic 呪術
sorcery 邪術
witchcraft 妖術


 私は文化人類学を専攻していたものだが、確か基本中の基本用語の英語日本語の対照は上記だったはずだ。呪術というタームそのものはmagicの訳語であり、原義は日本語で言うところの「呪い」の意図の有無によって必ずしも規定されるものではない。


 「雨の競技場 ある呪術」という曲を公開しました。よろしかったらお聴きください。



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コチラでもお聴きいただけます。



※制作の様子


秋分の日の前の晩
 あ、明日暇だから何か弾いて録音しよ、と思い立ち、しかし思い立ったのが夜の11時頃だったので、近隣に音の漏れない楽器で骨格をスケッチしておくなら、と手に取ったのがエレクトリック・マンドリンだった。1時間ほど、リフの素を作ってノートに書き留めておく。


秋分の日
 普段お世話になっているGarageBand Users Clubというサイトのイベントで100秒のHAPPYな曲というテーマで楽曲を募集していたことを思い出し、どうせならその100秒にまとめてみるか、と考える。
 BPMを測り、小節数を決め、リフの登場する個所を配置し、全体のスケッチとする。
 太鼓を録音する。ドスドス。下手だ。
 生マンドリン、エレキマンドリン、ウードという西アジアの弦楽器、鈴(正確に言うと鈴が装着された足輪)などを録音し作業を終える。ここまででリズム、ベース、リフ、バッキングの広がりが録音されている筈なのだ。


●それから2〜3日
 演奏の、起伏の修正・ノリの改良。シンセ音の追加。歌詞と歌の節を作り、それに合わせて全体の調整。


●ある土曜の午後
 笛、俗に言う親指ピアノ、鍵盤ハーモニカ、歌などを録音し作業を終える。これによってスパイシーなアクセントが加味されている筈なのだ。


●それから2〜3日
 ミックスして、マスタリング(というほどたいそうなものでもないが)して完成。



 ということで、10月4日に銀座アップルストアで行われたイベントでは、いろいろなハッピー曲に交じって、晴れてこの一聴グルーミーな曲も会場に流れ、そして私は仲間と朝まで飲んだ。


 ちなみに帰りの地下鉄で乗り換え駅を乗り過ごし(軽く寝ちまった)、しかし昔歩いた覚えのある駅を思い出し、そこで降りて歩いてみたのだが、遭難した。もうだめかと思った(なんとか生還しました)。


 一連の工程でちらちら思ったところは、人は歓喜のために願うものだな、とでも申しましょうか。


 みんなにハッピーを、という善良な願いも無論よい。
 みんなに災いを、相対的に俺だけハッピー、みたいなよこしまな願いも、まぁ、否定はできまい。実に人間らしい願いだよ。
 俺と君だけ大ハッピー、二人の世界、周りは見えません、も、多くの歌のテーマじゃないか。


 音楽がやろう、描こうとしていることの一つは、歓喜のためのまじないのようなことなのかもしれない。magicなのかもしれない。実際、magicalとしか例えようのない曲って、誰しも心当たりがあるのではないだろうか。


 さて、私は上述したとおり文化人類学を専攻しておったわけだ。んで、人知れず文化人類学系民芸ロックなどという針の穴を通すようなニッチな線を狙って活動しておるわけでもある。おほん。えへん。が、まぁ、私が思うに、私のように研究者などにもなり切れなかったたわけにとって、アカデミズムはアートに何ら有益ではない。だから何なのだの世界である。必要なのは激しく刻むパッションと欲望と人生である。それさえあればよい。燃えろ!バクハツ!!


 あ、やべぇ、あーちすとにもなり切れなかったことに気付いた。いてっ、いて・て・痛。