リペア週末(1)


 実は12弦ギターを持っている。


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 だからどうしたという感じだが、12弦ギターというものはギターを弾く人でも持っていそうで案外持っていないものなのだ。


 私とこやつの出会いは20年近く遡る。その日、私は失意のズンドコで西新宿を歩いていた。ん?なぜにズンドコかは、まぁ、放っておいてくれ。とにかくステステ歩いていたところ、とある質屋の軒先にぶら下がった12弦ギターを見つけた。程度は良くなかったが、財布に入っている金で買えるプライスだった。確か7,000円くらいだったと思う。


 気分転換という訳でもなかったのだが、とにかくズンドコのどん底で購入したのである。


 で、買ってきていじっているうちに、それがまたズンドコなギターだということが分かってきた。いたるところぼろぼろなのであった。しかし、私もまた、昔から些細な事にまったくこだわりのない人間であるので、そのぼろぼろギターでライヴをやったり、しかもピックアップをつけてアンプにつなぎ、12弦ギターでギターソロを奏でるなど、愚と申しましょうか、アバンギャルドと申しましょうか、大音量が轟きわたった瞬間に「しまった、やらなきゃよかった」と我に帰るような、そんな日々だった訳だ。ズンドコ青春である。


 さて。しかし、あまりにも程度が悪かったせいもあり、その後、ろくに弾く事もなく友人の家に放置したまま、その存在も完全に忘れ去り時は流れた。


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 昨年のことである。どうした加減かライブなどすることになり、移動式音楽班の非常勤メンバーのruruさんと打ち合わせをしていて、ふと思い出したのだ。


 「あのさー、俺、君んとこにギター置きっぱなしにしてない?」


 なんのことはない。友人とはこの人である。


 「あははー、すっごい邪魔だったでしょう、すまんすまん」などと適当に言い訳をするが、両手の指でも足りない年月放置していたのだから、これは大変な迷惑としかいいようがない。笑って誤摩化す以外に方法があったなら、誰か俺に正しい生き方を教えてくれ。


 大体、なにゆえその存在を思い出したかというと、ライブで全曲違う楽器を奏でようと企画していて、歌いながら弾ける武器をリストアップしていて考え抜いた挙げ句思い出した次第。なんとなくズンドコ青春からあまり進化していない感じがする。


 久しぶりに手にする12弦ギターは、さすがにそれなりに分別を心得た俺にとって、ライブで使用するのは不可能と思われる代物だった。とにかく音合わないし。ネック反り過ぎで。


 おそらく、往時の俺であったなら、ギターの程度はともかく、とにかくライブで使用するという方向へ突っ走ったであろうから、それに色を塗るとか(特にサイケペイントを好みます)、羽をつけるとか、そんなくだらん細工でライブのための準備期間を浪費したであろう。ギミックでありフェイクである。しかし、ふっ。私はもうそんなことはしないのであーる。はっはっは。


 ということで、押し入れの奥に叩き込み今日に至ったわけだが、折角なので直すことにした。その顛末を綴ろうと思っていたのだが、愚にもつかぬ思い出を綴っておったら筆が随分すらすら進んでしまった。ということで、ズンドコな12弦ギターをリペアする激闘編へ続く。