魔性のヘルパー


 私が所属する楽団である移動式音楽班ですが、反戦術的猫鼬(ANTI TAKTICAL MONGOOSと読むようです)という団体のヘルパーさんとして招かれ、微力ながら演奏させていただいた曲が公開されています。よろしかったら是非お聴きになってください。


DIE TANZEN


http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=10367&cid=16


 公開された説明文を引用します。


反戦術的猫鼬は、井草見(a.k.a.xkzmy59)がお気に入りのヘルパーさんと
一緒にコラボするためのユニットです。
前回から約8ヶ月ぶりになる今回は
GBUCの永遠の旅人、移動式音楽班さんを
ヘルパーさんに迎え一曲でっち上げてみました。
よろしかったらお聞きください。

原曲破壊、エレキ及びアコギ演奏、民族色の強い打楽器一式、文言、歌唱:移動式音楽班
原曲制作、移動式制作部分の破壊、詠唱部及び弦楽部編曲、最終構成:井草見


 昨年、大磯のライブハウスで演奏した折、遊びにいらしていた井草見さん(a.k.a.xkzmy59)という永遠の59歳・どんな曲を手がけてもウラがあるとしか感じられない作品をものする鬼才と「なにかやりましょうよ」と甘美な悪巧みを交わしたものだ。


 私の「なにかやりましょうよ」は決して社交辞令ではなく、概して真剣、マジである。


 それからしばらくして、一聴したところ趣味の良い、快活なオーケストラ風の曲を頂いた。好きにいじって良いという旨のお墨付きまで。


 私はこの「好きにいじって良い」という、まぁ、こちらに変なプレッシャーをかけまいという気遣いだろうと容易に推察されるありがたい慈愛に満ちたお言葉を「違う曲にしてくれなければ困る」という風に、常に読み替える習性がある。こんなときだけアラビア人的な人格が乗り移るのだ。え?好きにいじって良いっていったじゃん。第一次制作者的な視点で眺めると魔性である。


 わかりました。まかせてください。


 その後、昨年暮れのライブ演奏の準備やら、車で追突されて首が回らなかったりだとか、なかなか進まない時期を経て、しかし、その間もいくつかの着想・構想はしっかり準備し、何パターンかのデモも制作し、ようやく今年の春頃、私のパートの演奏・録音に臨んだものであった。


 そんなことをテーマに話し合ったことはないが、井草見さんと私の音楽遍歴を比べてみると私には面白い。


 おそらく井草見さんのベースになる部分にはビートルズがある。私にはストーンズだ。そしてお互い、パンク、ニューウェイヴを経て、井草見さんは西洋のシリアス・ミュージックに傾倒し、私は非西洋の音楽に傾倒した。途中リンクしつつ、こうした経路を辿った私達は、案外、音楽を相対化して眺める視点を持っているのかもしれない。


 「民族音楽的」などと言われることの多い私の作風芸風だが、楽器が多少変わっているだけで、やっていることはまったく違うよな、と指摘したのは井草見さんだったものだ。はっはっはと笑ってしまったものだ。


 そういうことで、敬意を込めて、原曲にプラスアルファな要素を付け加え、リターンしたのだが、遂に完成した作品を聴くと、多分、私発の魔性の敬意は充分受け取っていただけたのではないかな、と感じる。


 だってそれもまた、極度に、全く違った曲になっているのである。先輩、光栄っス。


 また何かやりましょう。