ソウル帰り



 韓国ソウルへ遊びに行ってきた。
 私の旅行のスタイルは、極めて場当たり的である。などと言うと、まるで旅慣れた人のように思われるかもしれないが、さにあらず。


 厳冬期ということで、オンドル(韓国式の床暖房)部屋のある安宿を、事前に日本からネット予約していた。


 ソウルの西方、仁川空港に到着し、ソウル市内へ向かう。金浦空港まで空港鉄道。そこから地下鉄乗り換え。途中、夕暮れ時のグレーな海辺風景は、既に私に100%厳冬を告げるかのような光景であった。緑っぽい色彩ゼロ。
 ぜーんぜん空き空きの空港鉄道車内(どうもこの鉄道、人気なさそうである)で、私は窓辺に仁王立ちになり、その光景を眺め、なぜか何度もうなずくのであった。


 覚悟は出来ておる。


 さて、鉄道&地下鉄でソウル中心地へ向かうと、すっげぇ時間かかります。軽〜く1時間半くらいは。そして地下鉄では景色も楽しめません(人の乗降は観察できるけれど)。空港バスのような乗り物のほうがベターじゃない?


 宿の最寄駅に着き、地上へ浮上する。なにはともあれ宿へ向かわねばなるまい。


 ここで極めて間抜け的な事実に気付く。宿の住所と電話番号はわかるが、地図がない。辺りの街角をきょろきょろ見渡してみても、どこが何丁目で、どこが何番地なのやら見当をつける術がまるでない。


 困ったな。


 適当に歩いてみる。意外とこんな直情的な行動で事態は解決したりするもんだ。


 15分後、事態は一向に解決に向かっていないことを痛感する。


 こういうときは人に尋ねるのがよい。その辺のミニストップで、レジにいた経営者らしき年配の夫婦に宿の住所電話番号のコピーを見せ、これどこ?と聞く。


 さぁ?、という顔をしていた二人だが、記載の電話番号にわざわざ電話してくれた。


 が、通じない。


 大弱りだぜ。しかしその奥さんが何度かダイヤルしているのを見ていて、その夫と私はほぼ同時に気付いた。


 奥さん、FAX番号にダイヤルしてますよ!


 電話番号に電話するとすみやかに通じた。助かったぜ、ミニストップの夫婦!


 丁重に礼を述べ、しばらく歩き、目印の地点まで迎えに来てくれていた宿屋の主に迎えられる。歩きながら、宿屋の主に「地図持っていなかったですか?」と問われる。はぁ、なんで持っていないんでしょうね、はは、などと答える。更に「乗り物何で来たのですか」などと問われる。もちろん電車ですよ、乗り継ぎですよ、はは、などと答える。「ええー?何でリムジンバスで来ないのですか?すぐそこ停留所なのに」などと問われる。そりゃー、電車が好きなんですよ、はは、などと答える。


 そして街へ出る。その辺、今回省略。


 宿への帰り道、ミニストップへ立ち寄る。遅い時間だが夫婦はレジにいた。いやぁー、辿り着けました、ほんとありがとうございました、などと礼を述べる。よかったよかったという顔をして二人とも笑ってくれた。


 買い物をしていると、甘いコーヒーまでいれてくれ、飲め、と。外、寒いからね、などと。


 間抜けでかっこ悪さのあまり、良いことに触れあえると旅行というものは最高の思い出になる。間抜けでかっこ悪さのあまり泥沼にはまり込む場合もあるが、嫌なことは忘れればよい。


 続く