改名、そして菌の不思議


 ヨーグルトを自分ちで生産して消費することにした。その方がずっと安いし美味しいという噂を聞いたが故。


 ブルガリア人ならお家にヨーグルト甕(かめ)があって、甕の中のヨーグルトを食しつつ、更に次のヨーグルトの種にもしちゃいつつ、日々暮らしていると聞いたことがあるのだが、俺も一丁、ブルガリア人になっちゃおうと思っちゃったのである。これから俺のことウンベルトフ・イドウスキ・オンガクハノフなどと呼んでくれ。


 ということだがしかし、甕を購入したわけではなく、ヨーグルトメーカーというマシーンを購入した。そもそも牛乳にヨーグルトの種を放り込んで放置していれば勝手にヨーグルトになるらしいのだが、菌の活動には気温が重要な要素であるらしく、マシーンならばその辺のコントロールを年中やってくれるというわけだ。


富士パックス販売 ヨーグルトメーカー Y-1000

富士パックス販売 ヨーグルトメーカー Y-1000


 いそいそとスーパーに出かけ、適当な牛乳(低温殺菌牛乳と加工乳は不可とのこと)1リットルと、適当なヨーグルト(フルーツ入りや砂糖入りは不可とのこと)を購入し、そのヨーグルトを種に制作する。制作といってもヨーグルトを牛乳に投入して匙で混ぜただけだ。で、パックごとヨーグルトメーカーに格納しスイッチオン。いや、スイッチはない。電源プラグをコンセントにぶすっと挿す。10時間待て。


(翌朝)


 ちちち、ちちち、きゅんきゅん ←野鳥の鳴き声


 朝だ朝だよ朝が来た。
 おはよう、牛乳ちゃん。食べごろヨーグルトちゃんになったかい? ←きもい囁き


 パックの口をぱかっと開け、中を覗いてみる。


 をををー。


 そこには白くツヤっとした物質。紛れもなくヨーグルト。
 菌の不思議。スプーンですくって口に運んでみる。


 おおおー。


 菌の不思議。酸味の少ない癖のないヨーグルトの味がお口に広がる。舌触りもクリーミーで非常に良いぞ。かなり満足感あります。


 まぁ、固さとか酸味とか、そのあたりのお好み調節は、今後私がブルガリア人としての地歩を一歩一歩確立していくにつれ解決していくに違いない。


 というわけで、菌の不思議に取りつかれた私は、続いてキャベツの漬物ロシア風に挑んでいるのである。ドイツ風(ザワークラウトってやつね)との違いはよくわからんが、既にスラブ人の名:ウンベルトフ・イドウスキ・オンガクハノフを名乗る私にはロシア風と呼ぶ方が合っているだろう。首尾よく仕上がると菌の不思議な力によって瓶詰の酸っぱいキャベツの漬物になるはずだ。