波



 今年の冬のある日、冷たい部屋でギターを爪弾く。


 ボロン


 弾いているうちにちょっとした進行を思いつきメモする。


 そんなときのメモであるが、ノートに殴り書きなので、後々、解読に苦労することが多い。ないよりはマシなレベルである。


 ギター弾いていて思い浮かんだ場合は、縦に6本、弦の数の線をダーっと弾き、横にフレットを表す線をザっと引いたダイヤグラムに、指の押さえ方を記しておくことが多い(例えばマンドリンだと縦線は4本となる)。


 しかしその方法では指遣いを変える度に、幾つものダイヤグラムを記さねばならず面倒だし、運指に動きがある場合は表現し辛いので、弦を表す線を横方向にビヨ〜ンと6本引き、その上に押さえるべきフレットの番号を記すこともある。簡易タブ譜という感じで、こちらの方が流れは把握しやすい。


 どちらで記録しても、どちらもオーソドックスな方法だろうし、どちらでも構わないのだが、前者の方が視覚的に押さえ方を把握しやすい。ギターを覚えたての頃(いつのことだよ)、眺めて弾いていた歌本に記載されていたダイヤグラムがそうだったからである。というわけで、縦線=弦方式で、そんな風に押さえ方を2つ記した、ある冬の日のことであった。


 え?押さえ方二つ??たったの二通りですか???


 そーっす。たったそれだけの労力で曲が出来ました。


 もしよろしければお聴きください。


 移動式音楽班「波」


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 ま、二通りの押さえ方というのは伴奏で、ちゃんとそれなりにエレキマンドリンなどで旋律も弾いちゃったりしているのだが、それも繰り返しだったりして、まぁ、なんともとってもシンプルな、くどくど説明する要素のあんまりない曲なのであろう。結構だ。


 ほんの気まぐれや、ちょっとした成り行きで、こんな生を営み、また、こんな音楽も演奏していたりするのだが、まったくその「ほんの」とか「ちょっとした」という奴が侮れん。んー侮れん。現在進行形で侮れん。私は一体どこへ行くのだ。


 と、そんな曲です。では、次の曲の制作に取り掛かります。