砂丘 バス


 「砂丘 バス」を検索してみればよい。鳥取砂丘へのアクセス方法が見つかるだろう。しかし、私が求めているのは観光情報ではない。但し鳥取砂丘へは行ってみたい。行ったことねーし。


 ある朝


「ねぇ、君、今日僕宛の荷物が届くはずだから受け取っておいてくれたまえ」
「わかったわ」


 その夜


「あなた、荷物受けとっておいたわよ。ところであなた。」
「なんだい、君」
「送り状に書いてある砂丘バスって、何なの?」
「・・・」


 例えば、演劇であるならば、劇に合わせて背景や小道具をこしらえるだろう。絵画であるならば、カンバスや、絵具を揃えなければならない。左様。素人音楽家とて同様である。曲制作に必要な道具を調達しなければならない。そこで私は一曲ごとに、私の美意識に従い、それに最善な構成・フォーメーションで曲を制作しているのである。詳しくは以下略。


 そんな私が目下の制作物に必要不可欠なものとして導入にゴーサインを下したのが「砂丘バス」なのである。


 砂丘 バス ずん。




 名門鈴木楽器製作のベース大正琴である。大正琴だというのに長さが1メートルくらいもありやがる。またお部屋が狭くなった。奥深き大正琴の世界。


 アンサンブルの低音部を何によって担うか。私の20年に及ぶ苦闘の道のりである。「普通にベース弾きゃいいじゃん」という声は、私の脳内にもこだまし続けているのであるが、それはその道に打ち込んでいる人がその道をとことん追求すればよいのである。私がアンサンブルの低音部に求めるものは、少し観念的なものなんだな。詳しくは以下略。


 さて、これ、大正琴アンサンブルの低音部を担う存在らしい。太弦開放はギターの6弦開放Eより長6度低いGである。多少、ボンボンした低音も出る感じね。大正琴で低音、変な感じだ。それこそ、アンサンブルの中で誰か一人がエレキベースでも弾けば良いと思うのだが、大正琴アンサンブラー達にとって、ベースまで大正琴で弾き切ることが、アンサンブルにとって観念的に不可欠な要素であろうことは、この砂丘バスの作り込まれた美しいフォルムを眺めれば容易に想像できるというものだろう。


 で、私は大正琴アンサンブル曲を制作しようとしている訳でもないのだが、いろいろ調査の結果、これではないかと。で、丁度そのタイミングで出物を発見したと。


 少し触って弾いてみて気付いたが、ボタンとボタンの間隔が広くて、結構弾くの大変かもしれん。普通のベースの方がストレートで回りくどくなく、それでいてより幅広い表現力で弾けそうな気が、当然のようにもの凄くするのだが、俺の選んだこの道が、曲がり道だとでも言うのかい、砂丘バスよ、轟け。ちなみにエレキベース大正琴です。