サバサンド

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 5月16日、移動式音楽班のホームページに「寄港地にて」という歌をアップロードした。


移動式音楽班 音の世界「寄港地にて」


 別にイスタンブールのことを歌った訳でもないのだけれど、ジャケット画像にそれを選んでみたもので、ちと、ひとつ思い出話を。


 大西洋というのはヨーロッパ、アフリカ大陸とアメリカ大陸を隔てる大海である。で、その大西洋からジブラルタル海峡を抜けると、大陸内海である地中海に至る。地中海を東進するとアジア大陸の西端であるアナトリア半島に辿り着く。半島に沿って北上すると、ダーダネルス海峡を抜けマルマラ海へと至る。北回りでも南回りでも海岸に沿って進むと、ボスフォラス海峡を通過し黒海に至る。一体、黒海に注ぐ水は、いつの日か大西洋に辿り着くのだろうか。なんだか着かない気がするぞ。


 なーんてことなど考えながら、マルマラ海とボスフォラス海峡が接する辺りに位置するイスタンブールの、入江に掛かる橋の上、海を眺めながら喰らうのが名物サバのサンドイッチなのだな。無論、海を眺めながらでなくてもよいが、この辺にサバサンドを売る小船が多かったので。


 油を敷いた鉄板の上でサバの半身を香ばしく焼き、フランスパン半分を横に割った中に、玉ねぎ、トマト、イタリアンパセリなどを刻んだものと一緒に挟む。塩、胡椒、レモン汁をばらっと振りかけ、親父は手渡してくれた。


 サバだけ喰ってパンを丸ごと海に投げ込む野郎もいた。サバの餌になるのかね?


 味は、俺が書いた通りに作ってみればわかる。但し、フランスパンは可能な限り、皮がパリっとして中がモチっとしたものを入手しておくれ。トルコ風だ。あぁ、塩サバは適しません。生サバです。


 橋から東側を眺めると画像の光景がある。西側を眺めるとイスラム寺院の尖塔が何百と屹立するイスタンブール旧市街がある。BGMはカセットテープ屋がフルボリュームで流す、ねっとりとしたトルコ演歌だ。


 橋はガラタ橋と言い、二層式の浮橋だった。一層目には店舗・レストランなどが軒を連ね、二層目が道路になった個性的な設計だった。その北側に固定式の橋を建設していたが、1992年、その完成と機を一にするように浮橋は火災で焼失した。