渋谷、私は歌った


 既報の通り、9月16日の夜、渋谷gabigabiにて演奏してまいりました。


 渋谷は相変わらず人で溢れていて、楽器をいくつも抱えた馬鹿がうろうろすると迷惑甚だしいだろうな、と世間への申し訳の無さを感じてしまうものだが、いや、まぁ、だが実際、都会を闊歩する人々は他人のことなど最大1秒くらいしか気にしないだろうから、それはそれで楽器をいくつも抱えた馬鹿にとっては居心地の悪いものではない。


 それにしてもこの暑さはなんだ、というほど暑かった。9月だというのに狂ったように暑い。狂った9月だ。だが、それは俺を祝福しているようでもあった。なぜなら、天気予報によるとこの日、ジャポン国中で晴れているのは、俺の棲家がある長野と、この関東だけだったのだ。他は雨だったのだ。こんなときは自分に良いように考えよう。反対にそこだけが雨だったならば、それはそれで自分らしい、と考えればそれでよい。心の持ちようさ。



その夜の移動式音楽班の演奏内訳


1. 寒い国のクロニクル(サズ)
2. ある美しい日のシャンソンクラシック・ギター
3. 野生水域〜8分の9拍子の舟歌マンドリン
4. ディオニソス、俺は知りたい〜寄港地にて(マンドリン
5. メンバー紹介歌:移動式音楽班のテーマ(チャフチャス ※美空ひばりチャルメラそば屋」Bobii Nooton作曲のカバー)
6. 通りの向こう、果てを見る(クラシック・ギター
7. あなたは花のように美しい女だ(クラシック・ギター / ハーモニカ ※友人のアントニオ=ホセ・サントス・アミーゴ氏作曲)



 御覧いただき、お聴きいただいた皆様に「イドー!」「移動式!」「移動さ〜ん!」などなどと盛り上げていただき、おかげさまでおよそ30分ほど、ありがたく演奏させていただきました。一人きりで人様の前でライヴをするなんてことも実質初めてだったし、一曲だが、ギターとハーモニカを合わせて吹くなどということも高校生の頃以来と、自分史の中で切れた糸をつなぐような思いも少し感じたものだ。


 いやに長く暑い夏だった。いろいろな人と出会えたし、行ったことのない場所へも行けた。その途中で通過していった景色すらいとおしい。そして、行く先々に素敵な音があった。その中で、自分もそんな素敵な音の風景の一部として、音を放射できていたなら、あぁ、なんて良いのだろう!


 もうじき昼は夜に打ち負かされ季節は巡る。私はまた新しい歌を思いつくだろう。そこにはそれまで知ることのなかったこの夏が、どんな形にせよ刻まれることだろう。またどこかで演奏できるとよいですね。俺は移動式、どこへでも行くぜ。


 ライブやリハーサルの模様(音源)も、折を見て公開したいと思っています。