ネズミ(1)


 今年はネズミちゃん年らしいよ。


 年男ではないがね、記憶によれば、小学生の担任の教師から動物に例えると「ハツカネズミ」と呼ばれたな。私。
 というわけで、私はネズミ系のネズミ的な習性を持ったちょこまかとした人間であるのかもしれない。一方、子孫をネズミ算式に増やしているというような事実はない。


 何年間か家族でハムスターを飼育したことがある。以下、種類と我々が名付けた名前。


 ジャンガリアン おはぎ、だんご
 ロボロフスキー きなこ
 ジャンガリアンスノーホワイト しめじ
 ゴールデンの金熊 バムセ


 長く生きて3年くらいだったかな。飼っているのが死ぬとオイオイ泣いて、埋めて、新しいのを購入してきてお世話して、死んで泣いて埋めての繰り返しだ。


 連中で好きなところは、そもそも何考えてるのか全くわからない生物なのだが、ときどき真ん丸くなっている時がある。この二頭身の玉生物のような状態は可愛らしいものだ。
 また、ハムスターやリスなど、げっ歯目の特徴でもあるが、ピアニストのような繊細な両手の指で(と表現したのは開高健だったか)カボチャやひまわりの種をそっとつかみ、モゴモゴと口へ運ぶ様子も可愛い。多分、同じような仕草であんまんをお口に運ぶ女性が目の前にいたら私はコロリと恋に落ちる。さらに玉生物のような毛糸の玉付き帽子などをかぶっていたならお世話したハムスター達を思い出し、抱きしめてしまうだろう。そして逮捕されてしまうだろう。イカン。


 まったく、将来の夢の一つに、モンゴルとかカザフスタンとかシリアとか、野性のハムスターが生息していると言われる地方へ行き、野性ハムと出会うことがある。
 私はケチな男で、旅行に際しガイドを雇ったり通訳を雇ったりなど、まず絶対にしないであろう人間であるが、標的はあまりにも小粒な野性である。この件については現地のハム通ガイド氏に「金なら出す」ときっぱり言い放つ所存である。漠とした平原で何日もキャンプしたりといった苦行や、暗視カメラのような機器を調達したりといった支出も覚悟の上だ。あぁ、いつか出会いたいものだよう、野性ハム。


(ネズミの件、続く、多分ね)