ウォッシュタブ・ベースを作る(その一)


 前にも書いたが(この辺とかで)、私は長年、ベースというものをどうしたら自らのすっとこどっこいな楽団(団員一名)に合った形で導入できるか試行錯誤してきた。私は基本的に生音にこだわりたいのだ。


 これまでの試行記録

  • 低音のことなど忘れてベース要素なしで演奏する。曲によっては気にならず、曲によってはスカスカな音楽になる。
  • ドローン=持続する低音を導入する。自分で「うー」と低音を唸ってみたり、オルガンなどの低音の鍵盤の上に文鎮のせっぱなしにしたりする。曲によっては不思議な効果が得られ、曲によっては音程がぶつかって非常に無気味な音楽になる。
  • それなりに低音の出る弦楽器で代用する。西アジアの弦楽器ウードとか、我輩が改造した2弦擦弦ギターなど。動きのあるフレーズは弾けるが代用なので実にパンチ力に欠ける。


 あぁ、ズシっとした低音楽器を導入したい。と、ある日、ネットでうろうろしていたら奇妙なものを発見した。どこからみても金だらいだが、その画像には「ウォッシュタブ・ベース」と書かれ、楽器として扱われているのだ。気掛かりなのは「ベ・ー・ス」の三文字である。


 早速、ウォッシュタブ・ベースで検索してみる。知らなかった。こんな楽器があるなんて。


 それはアメリカのジャグ・バンドなどで導入される楽器で、日本国内にもプレーヤーがいるらしい。洗濯板やスプーンをバンジョーやギターと一緒に陽気に演奏するのは知っていたが、まったくその手の音楽を見聞きしないものでベースがどうなっているかなど知らなかった。


 ウォッシュタブ・ベースの基本構造は、大き目のブリキのたらいの底に穴を開け、洗濯紐を通し、寝かせたたらいから垂直方向へ立てられた掃除モップの柄の上部へ、紐のもう一端を固定するというものである。たらい=共鳴胴、洗濯紐=弦、モップの柄=棹、ということになる。洗濯係とお掃除係が生み出したかのような楽器だ。音程は棹を引いたり倒したりして変えるらしい。


 更に、世の中全く便利で親切なもので、ウォッシュタブ・ベースの製作方法を説明してくれているサイトがある。



ウォッシュタブベースの作り方(Boogie Woogie Ace & the Rhythm Kings のホームページより)



 もう、いてもたってもいられないのである。普通、作るでしょ。これは。必要でしょ。一家に一台。なにはともあれ俺は金たらいを買いに近所のホームセンターへ走ったのである。


 ない。


 ないのである。金たらいが。ウォッシュタブ・ベース需要の増大でたらいの供給がおいつかないのだろうか、否、それは違うな。今時、そんなもの売られていないのだ。たらいで洗濯する人間がいないのだよ。ほとんど。よほど、電気でも止められちゃっていないとねぇ。


 だが、俺は3月26日に記したように(参照)、大日本の首都である大東京方面へと行く用があることを思い出し、東急ハンズにないものねーだろ、と安易な気持ちで関東地方へ、そして渋谷へと向かったのだ。


(次回へ続く)