美しいものには忍び寄りたくなります。


 Juana Molina(ファナ・モリーナ)のファンである。


 以前、2001年か2002年か、その頃、ラジオで彼女の曲がかかったのを聴き、ぶちのめされて以来、私の中では好んでその音楽を聴くアーティストの一人である。アブストラクトなシンセ音とギターの爪弾き、呟くような歌。少し無機的、どこか有機的、やはり魔術的なラテン音楽であると思う。


 しかし、私は最近まで彼女の外貌をほとんど真面目に拝んだことがなかった。こんなに何年も聴いていてだ。つくづく薄情なリスナーであり、ファンを名乗るのもどうかと思うわけであるが、はい。最近拝んでしまいました。といってもその辺のWebでだが。


 いやあ、お・お美しゅうございます。


 「アルゼンチン音響派のミューズ」などと形容されていたことを思い出し、初めてその言葉の意味するところを知る。誰もがミューズを名乗れるわけではない。





 アルバム『Segundo』の3曲目の曲。アルバムのバージョンも良いが、それとは全然違う、このライヴでのアレンジと演奏にまたぶちのめされる。


 フットスイッチを駆使してサンプリングしたシンセのループを操るのはよい。映像からもよくわかる。それも素晴らしい。そして、しかし、それに加えてギターと、なによりも声だ。ギターと声さえあれば何でもできる、ということを思わずにはいられない。計り知れない軽やかさよ。