ビーフ・イーター


 先日、ちょっと気合い入れて肉を食ってみることにした。牛。


 こんなことをお聞きになったことがあるでしょうか。


 南米では牛肉をよく食う(特にアルゼンチンとウルグアイ)。500グラムくらいのステーキなど、子供でもペロリと平らげる。日本で好まれる脂身の多い牛肉と違って、脂身の少ない赤身なのでいくらでも食えてしまうのだ・・・


 そうなのか?そういうものなのか??


 実証してみよう。


 ということで近郊のブラジル食材店に赴く。一応コンセプト的にアルゼンチンやウルグアイに近いだろうと想像できそうではないか。同じ南米大陸だし。精肉売り場もちゃんとあって、いろんな部位・カットを商っているのだが、ランプという部位が人気がありそうだった。確かに脂身を感じさせない赤身肉に見える。


 それよりも安いシンタマという部位のスライス肉が目に留まった。これは確か腿の一部で味わい深い部位だったと記憶している。しっかりと赤身である。安いし、これでよかろう。後は勝負に挑む目方であるが、ステーキや炙り焼きにするなら500グラムくらいに挑むのも良いだろうが、カツレツにしようと思っているので400グラム弱ほどのパックに自制する。300円くらいなもんだ。安!


 帰宅しパックを開けるとスライスした牛肉が3枚入っていた。大2枚・小1枚、日本のスーパーなどでは「失敗」の烙印を押されるであろういい加減な商品作りだが、私はそんなこと少しも気にしないラテン・マインドの持ち主である。


 叩いて下味をつけておいた肉を溶き卵にくぐらせ、乾燥パセリを混ぜたパン粉を両面にへばりつけ、ラードで両面がパリッとするまで焼く。日本式のディープ・フライなカツではなく、洋カツである。


 さあ、一枚完成である。いっただっきまーす。肉を食うと身体が酸性になるので、野菜や赤ワインを一緒に摂ろう。アボカド、キウイとトマトのサラダ、ルッコラのサラダ、ブラジル食材屋で合せて購入してきたパンなどとともに宴を開始する。



 しまった、カツレツ、片面はパリッとしているがもう片面の焼きが足りねぇ。


 反省点の残る一枚目だったが、軽く食えてしまう。まず150グラムほど摂取完了である。


 キッチンにて二枚目を焼く。今回はじっくりとパリッとさせます。そして一枚目より塩味を濃くして味の変化をつけてみましょう。


 二枚目完成、いっただっきまーす。ということで、二枚目は一枚目の片面非パリッの反省を十分に生かし、更に美味しくいただくことができました。累計300グラム摂取完了だ。


 いよいよ最後の小1枚であるが、この辺りで既に満足感はある。これ以上食わなくてもいいのだが、この企画はそのような程々な姿勢を美徳とするものではない。なので当然調理する。しかし、おお、溶き卵が既に先の二枚によって終わってしまった。三枚目のカツを制作するのを断念し、適当にネギとかピーマン(冷蔵庫の在庫)と共に焼き焼きして食おう。三枚目もいっただっきまーす。


 いい加減に酒が入っているので細かいところの感情の揺れをどうも思い出せないのだが、最後の方は相当満腹だったと思う。

  • 肉400グラム
  • アボカド半個
  • トマト半個
  • キウイ半個
  • ルッコラの葉っぱ 適宜
  • ブラジル風のパン一個
  • 赤ワイン一瓶


 へっ。大した消費量じゃねぇかい。


 カツレツ300グラム+ソテー100グラム=400グラムいけるのだから、ステーキor炙り焼き500グラムはいけるのではないだろうか。パンを食う量などを加減すれば、いけてしまいそうな気がするよ。


 しかし今回は見た目で満腹しないよう、一枚一枚小出しに焼いて食うという工夫があったわけだし、作りながらなので、宴開始から終了までそれは2時間にも及んだ。ズドーンと500グラムの肉を供されたら、それは俺にはちと厳しい気がしないでもない。また、付け合わせに定番のイモなどを供されたなら、更に厳しい、絶望的な格闘となることだろうとも思われる。やはりアルゼンチン人やウルグアイ人は鍛え方が違うな。


 余談だが、私は牛肉をそれほど好まない。豚や羊の方が好きだ。


 が、まぁ、400グラムでもラテン・マインドは結構刺激されたぜ。やっぱ赤身肉だな。牛も悪くないな。


 それから、日本のパン粉はきめが粗いので、カツレツには向かないことがわかった。今度カツレツを作る時にはパン粉もブラジル食材屋で調達しなければならない。