深紅の根菜
何だ。
ビーツです(茹でて皮剥き済み)。あのロシア料理のボルシチに入ってる紅のやつ。
長野県は日本におけるビーツの主な産地の一つらしい。主な産地っていったって、生産量はきっと相当少ないのだろう。
例年、7月くらいになると近所のスーパーに、トレイの中にビーツが3個くらい盛られたパックが199えんくらいで並ぶ。しかし、それが全く売れているそぶりがない。私もこの時点では決してビーツを購入することはない。
その翌週くらいになると、それが必ず99えんくらいで見切られている。その状態でも全く売れているそぶりがない。私はそれを1パック購入し、茹でてサラダなどにして食うことが初夏の習わしであった。
今年は作戦を変更した。
例年通り、99えんくらいに価格が下落してから2パック購入する。まとめて茹でて、スライスして保存瓶に詰め込み、深紅に染まったビーツの茹で汁、塩、砂糖、酢を調合した漬け汁に、更に胡椒、月桂樹の葉、クローブなどを加え漬け込むことにした。ちょっぴり甘酸っぱい酢漬けである。大きめの保存瓶を2個用意したが、入りきらなかった分は例年通りサラダなどにして食った。
一週間も漬けておけば、そろそろ食えようになるのだが、この酢漬けが「美味い!美味すぎるっ!!」と言う訳で、これが滅法美味く狂喜していたところ、近界のビーツ・シーンが、今年は更に新たな展開を見せ沸騰していたのだ。
ビーツを1パック99えんで購入して、更に2週間ほど経ったある日、私は近所のスーパーの見切り棚で衝撃的なものを発見してしまった。
ビーツ1袋39えん!
投げ売りである。もやし1袋並みのプライスである。しかも1袋に4〜5個ぐらい入って軽くパワーアップしている。もういーや、39えんで、などと自棄になって値付けしている店員の顔が目に浮かぶ(面識はありませんが)。よほど需要がないとしか言いようがない。2袋購入。
そんなにビーツがあったって悪くなっちゃうでしょう!
ふっ。甘ちゃんの意見だね。
こんなもの袋に入れて冷蔵庫の野菜室などに転がしとけば、少なくとも一月ほどは軽く持つものなのさ。店も見切る必要なんて本当はないのさ。
ということで、それから一月ほど経過し、近隣縁者などから夏野菜をいただいたりして冷蔵庫の野菜室が飽和状態となったため、再びビーツをまとめて茹で、甘酢漬けを製作したというわけだ。
ビーツはいいぞ。
以前、茹でたビーツを一玉食った翌日、薄赤いしっこが出た時は、血尿かとひるんだ。更に折悪しく、健康診断のための検便をせねばならず、なるべく見ないようにしていたのだが、見てしまったのだよ私は。うんこも紅い。一瞬、血便かと青ざめる。
そして先日、ちょっと用あって山を越え、隣県である群馬県高崎市へ赴いたところ、デパートの食品売り場で長野県産ビーツが一玉300えん程で販売されていた。
あは。私が今年ビーツに消費した全金額を一玉で上回っておる。セレブリティ・ビーツ。きっと出るぞ〜。真っ赤なやつが。←出るものの解釈は委ねます。
しかし、こんな美味いもの、何で見向きもされないのだろ。日本に定着した洋野菜と定着できない洋野菜。そこにある違いは何なのだ。まぁ、来年もビーツが出回る初夏が楽しみなことは言うまでもない。それまでしばらく甘酢漬けを食いつなぐのだ。